ばかなやつだよ
太宰がいわゆる美少年という類の顔面を所持していたことは、癪だが客観的視点で理解をしていた。
美形の子役は成長するとちょっと崩れるなんて世間の雑談を聞いて、じゃああいつの行く先は真っ暗だな、いい気味だと思っていたのに、十八になっても奴の顔は美しいまま、四年の不在の間に落としてきたのは幼さくらいで、益々たちがわるくなっていた。
「君の伸びしろってほんとさ、どうなっちゃってるの」
やっと唇から唇を離してくれたかと思えば、太宰の言うことはそれで。任務終わりに路地裏で一服つけていたところに現れ、勝手に喋り、勝手に近づき、俺を固いコンクリートの壁に追いつめて、唇を奪い、野良猫を触るような手つきで首筋を撫でる。
「……悪かったな。手前にそんな獰猛な目をさせる俺になっちまって?」
「うざ。中也はちっちゃな可愛い系に成長するものと思ってたのに、こんなえっちになるなんて聞いてない。わざとらしく人気の無い所で待ったりして……ばかじゃないの?」
不機嫌な顔も嫌いじゃない。
手を引かれ今夜もどこかへ連れて行かれる。
ああ俺たちはそれなりにいい男に成長できたのに、行き着く先がここなんてさ。