映画『ヤクザと家族』を観ました

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ネトフリやアマプラでチャットしながら映画を観るのがすごく楽しいのですが、先日は配信が来るのを楽しみにしていた邦画『ヤクザと家族』を観ました。
はぎぎさん(暗い映画も好きな繪子が暗い映画に誘っても一緒に見てくれる人)と見るぞ~~とツイートしたら、「自分も気になってる映画なのでレビューお願いします」、という内容のマシマロを送ってくれた方がいまして、いいけどこないだのDA舞台のような知性のないレビューになるぞ、いいのんか、とお返事しました。
言いましたからね私は。知性のないレビューになると。言いましたからね!!

この先、映画の内容に容赦なく触れます。アッネタバレ読んじゃう!助けて!と思ったら先に映画を観てきてください。
あと、私は綾野剛の演技と、あぶない刑事のときから舘ひろしが好きなのでどうしてもこのお二人に贔屓目です!

 

開幕お葬式!白ダウン・白ジャージ・金髪の平成ヤンキースタイルな綾野剛がオートバイで父親の葬式に顔を出すところからスタート。
綾野剛の父親は元エリートだったのに覚せい剤に溺れ、シャブを買う金がなくなって最後は海に飛び込んで死にました。仕事もやりたいこともなく、舎弟その1、その2とオートバイを走らせていた綾野剛ですが、偶然シャブの売人を発見!衝動的に売人をボコッてシャブと金を奪って逃走!そして、大量のシャブを海に捨てました!
この行動、私すごく好きでした。父親が死んだ海にシャブを投げ捨てるの、腹いせのような弔いのような感じで。もうこの時点で綾野剛優しい~♡って思ってたんですけど、まぁバレますよね、売人のバックにいるヤクザ・侠葉会に。追われて死ぬほどボコられます。ボコられたあとで車に乗せられて運ばれます。金も薬もないので臓器を売られることになったんですね。ヤクザは怖い!綾野剛の臓器売ってくれよ!そんなこんなでお船に乗せられそうになったところで綾野剛の服のポケットから柴咲組の組長・舘ひろしの名刺が出てきます。
柴咲組の元構成員・木村の妻が一人で切り盛りしている焼肉屋で舘ひろしがヒットマンから殺されかけたところをたまたま助けた縁で、一度組にスカウトされていたんですね。
そのときはヤクザになるつもりなんてなかった綾野剛ですが、たった一人の父親が死に、父親を死に追いやった覚せい剤に反抗してやったと思ったら簡単に殺されかけ、身体は血だらけで痛いし、やりたいことも行きたいところもない、そんなギリギリの状態で張りつめていたときに、舘ひろしから、「行くとこあんのか?」と、優しく尋ねられるわけですよ。決壊したように、泣き出す綾野剛、好きだ~~~~~~!!!!!!!幸せになってくれ~~~~!!!!!!

そして柴咲組に入り、舘ひろしと親子の杯を交わして、ヤクザという「家族」を得ました。
自暴自棄な表情をしていたのが一変して、命をかけても家族(親父)を守るという精悍な顔つきに変わる一瞬、映画のタイトルが入ります。めちゃくちゃかっこいい!!

クラブで派手に飲み、高級な部屋に住み、バブリーな振る舞いをするヤクザたち。
しかし、少しずつ暴力団への締め付けが厳しくなっていき、大事なシノギである風俗店もどんどん潰れていきます。そんな状況なので、侠葉会と柴咲組はシマの取り合いのような関係になっていくのですが、ここから面白くなっていきますんで、ちょっとざっくりいきますね。

傘下のクラブで働いている苦学生・由美のことを綾野剛は好きになっちゃうわけなんですが、もうね、口説き方がやばいくらいド下手くそで最高に面白いです!
ヤクザになってからは女なんて呼べばヤレるみたいな感じだったので、そんな流れでクラブのママづてに自分の部屋に呼びつけて(来させるなよまず、どういう態度だ)、早速押し倒したらボコボコ叩かれて抵抗されて、「なんだてめえ処女かよ!」「てめえなんかやんねーよばーかばーか!」「いやいまやろうとしましたよね?」「してねーよ!」みたいな……凄みきかせてヤクザやってるけど、中身は、色んなことを教えてもらう前に大人になった子供なところが残っているんですよね。今の「家族」との生活と、好きになった女との交流の中でそれらを経験していけるはずが……そうはなりません。

余談ですが、普段太宰の攻めに慣れすぎていて、押し倒したら抵抗されてヤレず悪態つく、っていう攻めが新鮮すぎました(攻めっていうな)。なんとかしてそういう太中を書けないだろうかと思いましたが、書け……書けないですわ!!でも毎回未遂に終わるおさむっていうのもいいですよね~~!!

ここから、色々あって綾野剛は14年間ムショに入るんですけど、
逮捕前夜、由美のアパートに憔悴して転がり込んだ綾野剛を由美は抱きしめ…
これは……これは太中だったらヤれるパターンだ!!!と思ったら(太中にするな)ヤレました!!!やったー!離反前夜はヤラせてくれる中也のあれです!同人誌で100回読んだ!

刑期を終えてシャバに戻ってきた14年後(令和元年)、もう世の中はすっかり変わってしまっていました。
風俗店街にはドン・キホーテやらコンビニやらが立ち並び、高級クラブは潰れています。
柴咲組の事務所がある雑居ビルには5名程度しか組員が残っておらず、みんな食えなくなってヤクザをやめていました。
今のヤクザは自分で携帯を契約することも難しく、まともな手段では家も車も仕事も手に入らず、ヤクザをやめても5年は人間扱いされない…という実情で、札束をはだかで持ち歩いていたあの頃とのあまりの違いに、綾野剛は戸惑い、そして由美を探します。

もうヤクザがヤクザ映画のような義理人情で食っていける時代ではなくなってしまっているんですよね。
だからといってヤクザをやめても、元ヤクザというレッテルはついて回り、過去に縁のあった人々に会いに行ったり、まじめに働いたりしても、何も悪いことはしていないんですが、みんなを不幸にしてしまう。綾野剛は家族を大切にしたいだけなんですが、家族は自分の目の前で傷つき、「あんたさえ現れなければ」と呪いの言葉を吐くばかりです。

ハッピーエンドに分類はされないと思いますが、終盤のシーンの綾野剛はほんとにほんとに美しいので……ぜひ見てほしい……。

幼いときに死んだ母親、海に飛び込んで死んだ父親、家族として迎えてくれた親父と兄弟、惚れた女、友人、それぞれの家族のつながりが本当にうまく描かれていて、家族を守るとか一緒にいるって、気持ちだけだとなんでうまくいかないんだろうとか思いつつ……でも、気持ちだけじゃ何も残らないのか?っていうと、そうじゃないんですよ。そういうラストシーンでした。

ヤクザ映画好きなんですけど、時代とともに苦しい立場に置かれていったヤクザのリアルな姿が、本当にしんどかったです。
珍しいヤクザ映画……いや、ヤクザ映画というかタイトル通り、家族の映画なんでしょうね。
ほんと素晴らしい演技、素晴らしいカメラワークでめちゃめちゃ良かったので、ぜひ見てみてください。

マシマロで教えていただいたこの映画のエンドロールの曲、『FAMILIA』のMVも観ましたよ。
同じ監督が映画のその後としてMVを撮ってくれたというので、世界観はそのままですが、どちらかというと「死者の視点」でした。
「生まれも育ちも この世界の仕組みも 狂っているよ全部 俺もお前も結局」という歌詞にさしかかると、海中から引きずり込まれるように、声が重なってくるんですが、愛した人たちが走馬灯を満たし始めると、登場人物が増えていって、それぞれの思いが交錯して、やがてひとりぼっちになって讃美歌のような場所に佇むことになります。
家族を大切にするって、むずかしいですね。

いい映画でございました。