中島にとって、その日は欧州国境警備隊に配属されて初の船出であった。
「お、お、お、お疲れ様です、隊長!」
海上の監視は僕たちがやりますから、隊長は船内で休んでいてください。今日は暑いですから! と言ってパラソルを差し出し、デッキの柵に寄りかかって真鍮の望遠鏡を覗き込んでいた隊長にじりじり照り付けていた日光を遮る。背後で彼の先輩隊員らが「あちゃ~~」という顔で見守っていた。
「ん……? ああ、確か君は密入国リストからのスカウト…異能力者の中島君か」
左肩の白いぺリースを潮風になびかせながら、目前の男はその辺にあった手頃なサイズの木箱によっころしょと腰を下ろし、制帽をくいと上げて中島を見た。