ああ、そういえば今日は太宰君のお誕生日だねえ。
紅葉姐さんの使いで任務の報告に出向いた折、首領の森は万年筆で机上の書類に今日の日付を記しながら、そんな言葉を漏らした。
「あの野郎にも誕生日なんてもんがあるんですね」
「そりゃあ今ここに生きているのだから、生まれた日は存在するよ。彼も人の子だ」
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ああ、そういえば今日は太宰君のお誕生日だねえ。
紅葉姐さんの使いで任務の報告に出向いた折、首領の森は万年筆で机上の書類に今日の日付を記しながら、そんな言葉を漏らした。
「あの野郎にも誕生日なんてもんがあるんですね」
「そりゃあ今ここに生きているのだから、生まれた日は存在するよ。彼も人の子だ」
ああ~~~~~……つまらない。つまらないつまらない、面白くない、退屈だぁ!
探偵社のソファにだらりと身を投げ出してそんな遣る気のない声を上げても、国木田が彼を咎める気配はなかった。
なぜかと言うと、その声を発したのが私――太宰治ではなく、この探偵社が探偵社として機能している所以である存在、名探偵・江戸川乱歩であったからだ。
敵は消滅した。もう休め中也。
視界をみるみる塗りつぶしてゆく暗闇の中にあって、その声は頭の中に直接響く。らしくなく真面目で優しい声音。汚濁状態の俺に丸腰で近寄ってあっさりと取られる腕。
変わらねえな、と考えていたことが口から出てしまい舌打ちする。幹部である自分専用の執務室で今の独り言を聞いたのは自分しかいないが、己に対してですらばつが悪い。迂闊な口を塞ぐようにしてシガレットケースから一本取り出し、火を点けた。