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「からだがいたい」とぼやいてもアラアラウフフといじられなくなったのは、犬飼と凪が楽園街の見回りを始めて数週間経った頃だった。

太い依頼もないのに毎晩見回り後にはにゃむの店で一杯注文する。
他の店の面々も、自分の店を閉めたらふらりとやって来るようになり、黒い電線に雀が並ぶようにカウンターに腰掛け、『今日の変客』、『今日のヤクザ』、『今日のいやがらせ』ネタでほんのちょっと笑ってから帰るということがお決まりになった。
巌真組による営業妨害の成果あって、よほどのファンか世捨て人以外、外部の人間は楽園ビルのテナントに寄り付かなくなっていた。だからこちらも気兼ねなく、内輪ネタで罵詈雑言吐いて酒を飲んだっていいというわけだ。
そんな雰囲気が少し寂しくさせてしまったのか、かほは最近姿を見せない。

哲太が自分の店に来る客の中に変なガキが紛れ込み始めたと話したとき、だいぶ酔いの回っていた刺青屋が「おまえのとこの客はもともと変なガキばっかだろ」と言った。哲太はそれに対して別に気分を害した風もなく、ただ一言、「あいつらはキモいけど変やない」と返していた。
そのとき、凪は残念に思った。
かほが今のを聞いていたら、また「推ししか勝たん」とか言って、きゃあきゃあ喜んだだろうにな、と。

今日も見回りの後、犬飼と凪は二人でにゃむの店に寄って、ウィスキーとラムコークを注文した。
凪が両腕を上げて大きく伸びをすると、にゃむは慣れた様子で「昨日は凪がソファだったのね」と言いながら、自分用のウーロンハイを作って乾杯を促した。

「睡眠は大事よぉ。凪、アンタ、若さを過信して変な体勢で寝てばかりいたら、そのうち体壊しちゃうからね」
「んなこと言ったって、事務所にベッド二つ置くスペースねぇし」
「ンもう、二人ベッドで一緒に寝たらいいじゃない」
「……!」
「あ、だめだめ。凪ちゃん『ふぇ!?』ってなっちゃうから」
「笛?」
「黙れ!シネっ!!」
「凪ちゃんって悪口のボキャブラリーが貧弱でいいよね」
「うるせ~~~~!!」

狭いカウンター席でぎゃあぎゃあと言い合いを始めたとき、ギィとドアが開いて、最上階にあるキャバレー『パラダイス』のママが溜息をこぼしながら入って来た。

「今日もおつかれさま。適当に作るわね」
「ありがと。はあ…あのチンピラども…今日も安酒一杯で粘りくさって、腹立つ!」

先代ママのメリーから役目を継いだ彼女と一緒に飲むようになったのも最近だ。
上品にセットされた夜会巻きのヘアスタイルとメイクからは大人びた印象しか受けないが、実際は犬飼とほとんど歳が変わらないらしい。ということは、凪とも同世代ということになる。『パラダイス』の営業時間中におつかいで頼まれたものを届けに行ったときなど、隙のない笑顔を貼り付けて接客している彼女を見る度に凪はその迫力と年齢のギャップにおどろいてしまう。
そんな彼女が、営業時間外には自ら作ったギャップを埋めるようによく喋る。

「困るわよねぇ。他のお客さんが怖がって来なくなっちゃうし」
「ウチはもう、女の子たちが次の場所を見つけるまで置いておくためだけに開けてる感じよ。後は逆に、アイツらうちで飲ませとけば他の店を荒らしに行かないでしょ。同じいやがらせするなら若い女と酒を飲める店の方がいいもんね」
「人身御供じゃないの」
「何ソレ」
「生贄ってことだよ」

犬飼は、にゃむから渡されたほぼトマトジュース味のカクテルをカウンターの角に座っていた彼女に手渡し、そう答えた。

「イケニエ? そんなかわいそうな役やってるつもりはないんだけど。それに…キャバレーの方はそんな感じで大赤字だけどさ、ホテルの方は繁盛してるのよ。皮肉よね、治安が悪くなるとああいう場所の需要が高まるの」

ああ…という表情で犬飼とにゃむは聞いていたが、凪にはぴんとこなかった。

「そういうの嫌ってたメリーも黒田くんもいないしね。警察もこの街で起きることにはいいかげんだし。他の場所の締め付けが厳しくなってきたから、こっちに流れて来てるのよ」
「なぁ、そういうのって何」
「でも従業員は足りてないんじゃない? 何人かまとめて辞めてったでしょ」
「そうなのよ。受付のおじいちゃんは住み込みだからいいけど、掃除が足りてない感じ。何部屋か閉めようかと思ってる」
「ちょっと勿体ないわねぇ」
「この状況で新しく雇うっていうのはナイでしょ」
「それもそうだけど……」

犬飼が人手不足の話題を振ったことで、ホテルがどういう需要で繁盛しているのかという話は聞けなくなってしまった。
よく分からないが、聞いた感じ、良い使われ方ではないのだろう。
凪は、友達に誘われて初めて楽園ビルを訪れ、ここのホテルで乱暴されかけたときのことを思い出し、記憶から追い出すように頭を振った。「酔った?」とにゃむが気遣う声をかける。

「そうだわ。どうせ使わないならその部屋、犬飼ちゃんと凪に貸してあげられない?」

頭を重そうに振りながらうつむいた凪を見て、よほど見回りの疲れが溜まっていると思わせてしまったのか、にゃむが突然ぽんっと手小槌を打って言った。凪は突飛な提案におどろいて瞬時に顔を上げ「ハァ!?」と大声を出す。

「この子たち最近早朝と夜に見回りしてくれてるのよ。楽園座の火事もあったし、自分たちはここに住み込みだからって言って。それでよく眠れてないみたいで」
「別にいいけど。掃除とシーツの洗濯は自分たちでしてね」
「えっ、いや、いらね」
「……お言葉に甘えさせてもらおうかな。ついでに他の部屋の清掃も手伝うよ」
「ありがたいけど、バイト代出せないから本当についででいいわよ」
「一部屋分の家賃がタダってだけで十分だよ」
「あ、うう…」

凪を置いてどんどん話が進んでいく。
翌朝、ここのホテルで長年受付をしている老人が欲望屋の事務所を訪ねて来て、閉鎖される予定になっていた数部屋のルームキーを犬飼に預けていった。一室は欲望屋が借り受け、残りの部屋は手の空いたときに清掃をして、終わったらその部屋の番号を受付に伝えれてくれれば良いという話になった。

ホテルの部屋の掃除なんて出来るのかよ、と、いつぞやもっさんと泊まった高級ホテルの埃ひとつ落ちていなかった部屋を思い出して凪は不安を洩らした。
部屋の鍵に付いているアクリルのキーホルダーを天井の蛍光灯に透かしながら、できると思うよ、と犬飼は答えた。掃除は毎日やっていたから慣れっこなんだ、と。
どの口が言ってんだと言いかけたが、そういえばこの事務所には生活に必要最低限の物が足りなかったりするくせに、ゴミがその辺に落ちていたり、シーツやソファが汚れていたりすることはないと思い当たり、言葉を飲み込んだ。自分がそれをやった記憶は数回しかないので、買い出しなどに出かけている昼の間に犬飼が掃除をしてくれていたということになる。一応雇われている側でそれはどうなんだ。
というか言ってくれれば凪だって掃除くらいする。犬飼のこういうところが、対等じゃないような気持ちにさせて、時々凪を拗ねさせる。このときも凪は少しもやもやして、つい「お育ちのいいことで」と軽口を叩きそうになったが、犬飼の過去を知ってしまった今となってはブラックユーモアにも程があるのでぐっと押し黙った。

「ごめんね? 育ちがよくって」

凪の考えていたことを読んだように、犬飼はにやにや笑ってそう言った。
凪はその手からルームキーを奪い取ると、さっさと行くぞ!とやけっぱちに声を上げて先に事務所を出た。

* * *

犬飼と凪に宛がわれたのは、狭いツインルームだった。
若草色の床は靴のままで歩くとぺたぺたと音が鳴った。病院みたいだなと思いながら、凪はドアを開けるなり目の前にでんと現れた2台のベッドを凝視していた。

「ベッドが、ふたつ!?」
「ツインルームだからね」
「いや、ベッドはひとつでいいだろ!」
「えっ…凪ちゃん、一緒に寝たかったの…? 今からでもダブルに替えてもらう?」
「一人は事務所のベッド使えばいいって意味だ!」
「ああ、なぁんだ」

何が「なぁんだ」だ。
シングルベッドで一緒に寝たって、自分のうろたえる反応を見て楽しむだけで実際は何もしてこないくせに。
と、本人には言えるわけがない不満を凪は小さな胸の奥に押し込めた。

絶対、両想いだと思う。
多分、勘違いじゃない。ないはずだ。
楽園座で目と目が合ったときに感じたあの熱を、犬飼も感じていたと思ったし、だからあれ以降、二人の距離はぐっと縮まっている。それこそにゃむや他のみんなからバカップル扱いされるくらいに。

でも、それは、心の距離の話で。

「折角貸してくれたんだから、ご厚意に甘えようよ。ここは安宿の部類だけど、それでもあのベッドよりは寝心地いいと思うな。きっと疲れも取れるよ」

そう言われてみればたしかに、犬飼が粗大ごみ置き場から拾ってきたというあのベッドよりマットレスが分厚いように見える。

「でもベッドとベッドがコレもうほとんどくっついてんじゃん! 隙間がない!」
「部屋が狭いんだからしょうがないよ」
「…………犬飼オマエ、また面白がってんだろ」
「面白がってるというか……」

犬飼は着ていたジャケットをハンガーに掛けると、ワイシャツのまま手前のベッドに倒れ込んだ。
いつも見下ろされている目線が逆になる。

「喜んでる」

その言葉通りの表情で見つめられた。
躯の内側が発火したように熱くなる。その火はじわじわと凪の喉を焼いて瞼まで紅く染め上げ、おなかの奥をじくじく苛めながらつま先まで到達した。

他の部屋の清掃を済ませた後、風呂にも行かずそのまんまの身なりで来ていた。
灼けた喉でぼそぼそとそれを指摘すると、犬飼は腕のところに捲り皺の付いたワイシャツも脱いで、ベッドとベッドの隙間にぽいと落とした。

「……て、テレビが事務所のよりも大っきいのな」
「液晶だと小さい方なんじゃないかな」
「へー、そうなんだ」
「壁に掛けられるのいいよね。何か見たい?」
「や、いい……」

間が保たない。
こことさほど変わらない狭い部屋で一年以上一緒に寝泊まりしていたのに、今さら緊張してしまう。いつもと違う部屋の匂いとか、この状況に。

「あ、シャワーって、使っていいのかな」
「自分で掃除するならいいって言ってたよ。でも、シャンプーとかはないから大浴場の方がいいんじゃない?」
「そうだな……あー……朝に、するわ……」
「うん。疲れたし、今日はもう寝よう」

カチャ、とベルトの金具を緩める音が聴こえて、凪は自分でも意識していないのにびくりと肩を震わせた。
犬飼は一瞬手を止めたが、何も言わずに腰からベルトを引き抜くとそれもベッドの隙間にぽとりと落とした。
黒い眼帯は床ではなくベッドのヘッドボードに置いて、それじゃお先にィ〜…ムニャムニャ…フカフカ…とわざとらしく眠そうな声を出して布団を被った。

凪は自分も着ていたスカジャンと靴下だけ脱いで隣のベッドに潜り込んだ。たしかに事務所の布団の十倍ふかふかである。もっさんの仕事先で百倍ふかふかの布団を知ってしまったことが少し残念だが、これに寝ていたら翌朝の身体が痛むことも減りそうだと思った。
横を向くと、犬飼も凪の方に身体を向けて両目を閉じていた。その露出した肩と両腕、眼帯のない白い瞼を見つめていると、変な気持ちになってくる。
もっさんに泊めてもらった高級ホテルの風呂で自覚してしまった気持ち。あれ以来ときどきこうして凪を悩ませる、「さわりたい」「さわられたい」という欲望。

そういう欲望は、自分みたいな女らしくない女には無縁だと思っていた。もともと興味が薄かったし、二度男から襲われかけてからは、自分の人生にそういうものを関わらせることを避けてきた。
依頼でしおりという女性のストリップを見て、凪は自分の中にも《女》という生き物が踊っていることを知ったのだ。それが悪いものじゃないってことも。

「う、う~~ん……むにゃむにゃ……」

犬飼の真似をしたつもりが、だいぶ輪をかけてわざとらしい。
凪は寝がえりを打つふりをしてベッドの端に転がり、右腕を隣のベッドへ伸ばした。
白いワイシャツ、ベルト、スカジャン、靴下、二人が身に纏っていた布たちが落ちて、ベッドとベッドの間の隙間に橋を作っていた。
あと少しで届くという距離で臆病になって、手を引っ込めようとしたとき、犬飼の手がそれを掴んだ。

びっくりして目を開けたら、犬飼も両目を開けて自分を見つめていた。
彼の口元は柔らかく微笑んでいた。
その顔を見たら、凪の感じていた緊張もするするとほどけてゆき、手をつないだまま、ときどき指先を絡ませたりして、しばらくそうして見つめ合っていた。

犬飼も、自分と同じように思ってくれているのだろうか。
自分と同じように、どうやってこの橋を越えたらいいのか、とまどっているだけで。

指先から伝わってくるぬくもりに、次第にうとうとと眠気がやってくる。
あと何回。あと何回かこの部屋で眠ったら、超えられる気がする。
正月の歌みたいだな、と思った凪はくすりと笑った。

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はぎぎさん、牛原さん、こんばんは。地雷作家の強火厄介ファン・繪子です。
お二方それぞれのパートについての感想を分けて書いていたのですが、地雷作家全体に対する熱い想いも余さずぶつけたい…と思い、一つにまとめて送ることにしました!
感情が強すぎて自解釈語りのようになってしまっている点がありますが、何卒ひろい心で読み流していただければ幸いです。

しこくてんれいの表紙…華と品がある太宰くんの文芸みを感じて興奮します。
いい表紙だ~~!「地雷作家が正方形になって帰ってきた!!」という言葉の音感もいい!直接印刷されてるから、あの帯どっかいっちゃったなんてこともなくてズボラに優しい!
「私は嘆いてなんていない!中也が当然の義務を果たさないことに憤ってるんだ!」これこれ~!!好きな作家さんの作品が読めなくて悲しい(ぐすん)とかじゃないんですよね!作品を生み出して私に読ませるということは当然の行いであって義務なんですよね!ダダダダダダ(「良い」ボタン連打)
遊び紙の色が無印の地雷作家と近いこともファン大喜び!地雷作家が帰ってきた~!!

中也の作業~環境~♪(※『亀田のあられ、おせんべい』のリズムで歌います)
この椅子の形…!無印で牛原さんが「十五万円弱のオフィスチェア」と書いていたので、AKRacingのプレミアムモデルでしょうか!?
インテリア重視ならもっと高級なラインがあるので、椅子に関しては絵を描くという作業(後にスプラという作業…)に最も適した機能を求めたのでしょうか。素敵…。
こ、この液タブ…無印で太宰くんがペンを触ったことあるんだよ!中也は知らないけれど、その椅子に太宰くん座ったことあるんだよ…!「妙に落ち着く」って言ってたよ!!
という興奮がすごかったです。壁を埋める本棚も描かれてる!ぐんぐん解像度が上がっていく…!
勝手に作った合鍵で不法侵入されて、驚いた様子もないし、玄関から書斎まで歩いて来る気配で中也は太宰が来たと気付いてますよね?
もはや「あー、また来た」くらいの感覚になっているのでしょうか…無印からここまでの間に何回くらい訪問イベントがあったのか!?たまらん。
太宰くんも中也の部屋の中ではきっとこの書斎が一番好きですよね…落ち着くって言ってたし…。良…。
地雷作家の太宰治は、ピッキングなんてしないんですね。育ちが…良くて…清潔…。

イベント出るくせに通販で買う派ですもんね太宰くんは…買えなかったと分かってすぐその足で中也の家に向かったんですね。ヤバ~…つきあっ…てない…。
別に太宰治のこと人間として好きなわけじゃないから自分の本読んでほしいです♡とはならないけれども、
小説家・太宰治の才能には骨抜きだから、小説家・太宰治が自分の絵をどう理解しているのかは知りたかった(俺の絵のどこが好きか言ってみろ)んですよね。
あ…?つまり…?太宰治の日常ツイートには興味はないけど、『ダ・ヴィンチ』で小説家・太宰治がインタビュー受けてたら予約購入しちゃうということ…!!?
森さんと太宰くんの対談とか載ってた日には3冊買いそう(そんな仕事は太宰くん絶対受けなそうだけれど)

「(絵が良くて)頭に入ってこないなあ」って言ってるときの太宰くんの表情と本を折り曲げずに開いている持ち方を見て幸せになりました。
中也の絵を見たとき、こんな顔するんだ…。「何がどうなったらこんなのが描けるわけ!?」じゃん!ってなりました。好きじゃん…(作品と才能が)

誕生日に小説をもらったときの当たり障りのないリプ!(私の心が濁っているからそう見えているだけです)
小説家・太宰治から小説送られてきたりしたら、こんなクールな反応で済むわけないじゃん!!無印の遊び紙のようなことになるんですよ!「もっと!」「最高!」になるんですよ!「感謝して褒めたたえる」なんて、そんな他の字書きに対してもしそうな反応で済むわけない!「ヒャ~~~!?!?!?!?」ってことになるでしょ!?太宰くんは、「中也は自分の小説が好き」ということは自覚しているけれども、「自分の小説に狂っている」くらいのレベルの「好き」ってことには気づいてないのかも…しれない…?と思うと、ますます妄想の幅が広がって毎日楽しいです。ありがとうございます。
太宰くん、何個もSS書くのは天才だからできるとして、メアド複数作ってアカウント作って、アイコンとプロフ作って、絵文字付きのツイートを…
何……?中也のことは好きじゃないけど、中也が自分の小説にメロメロな事実はいくらでも噛みしめたいって…コト…??え…?好き…?
文体変えたくらいで気づかれないと思って驚いているあたり、やっぱり中也→太宰への「こいつの小説が好き」のレベルを実態より低く認識している感じがする…。
もっと狂っているんだよ!!!おまえの小説に!!!

それにしても、地雷作家の設定でもうひとつ大好きなところがありまして、それが、原作者が二次創作のイベントに普通に来とるってことなんですけど。
原作者が書いた二次創作の本をタダでもらえるなんてすごすぎない?…………あっ……朝霧カフカ……いや、なんでもないです。
太宰くんは学生時代からずっと織田作のの目に映る世界を見せてもらうのが好きだったんですもんね。そりゃあ、嬉しいよね…嬉しいよ…小説もらえるなんて…。
で、その表紙の絵を見て「中也の絵」と一瞬で分かるのは当然として、「夢?」って何!?!?!?そんなにキラキラして見えてるの!?「夢?」って何!?!?!?
もうWEB拍手で送れない文字数になっているので、DMで送ろうと思います。

この世界、安吾が中也と本当にまっとうな友人関係を築いていることがこれまた大好きなところです。

「僕は作家として中也が苦しむのを見たい」
「きみは私の地雷作家だ」
え…あの…あまりにも…サビすぎる…さ、最終回…???地雷作家、フィナーレ…???
太宰が作家として紡ぐ言葉であれば選評にも目を通す中也、あまりにも…「ファン」…!
太宰治の言葉に完全に魅了されている。最悪であっても最高。ウウ~~~良すぎる。
「創作者として、創作に苦しむのがきみの役目だよ」と他ならぬ太宰くんが言っているので、
「創作者として」に全然かからない恋煩いなど…余計で…どうでもいいものなんですよね…。
これが公式の答え!あきらめて!繪子!
嫌だ!いつかえっちする!ぜったいいつかセックスさせる!!!
しない!しないのよ!地雷作家の二人は死ぬまでキスさえしないってうちのChatGPTも言ってたでしょ!?

これが世界の答えなのよ…。
そんな…こんなに強烈な執着を互いに抱いているのに…こんなにどろどろした感情を向けているのに…
「けれど、どうしようもなく澄んでいる」って…こと…。

中也の人格は全部気に入らないのに、「ナカハラさんはどういう小説がお好きなんですか」って送ったときの景色…
あたし、一生忘れないから…。もう、もう……好きじゃん……助けて……。
だけど中也が神絵師であり太宰くんの地雷作家であり続ける限り、小説家太宰治の創作意欲は安泰で、
つまり、二人は死ぬまで相手の創作物に恋をし続けるってこと!!!

ちなみに、ネトストメモ(ありがとう)で一番のオキニは、
「中也の絵にこのフォント合わせるデザイナーとは解釈が合わない」です!!
「森さんの新刊でるから中也をミュートする」も好き…。
中也が気取った(ように見える)キャラじゃなく、好きな作家が森さんじゃなく、太宰くんをフォローした後すぐ外したりしなければ、
もしかしたらもしかしたらLOVEな展開があったかもしれないのに、でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、繪子…。

まだまだ何かにつけて地雷作家の話をしているかもしれませんが、そっと放牧してください。
最高の続編をありがとうございました。続き、いつまでも待ってます!!!!!!!

繪子より

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 急行の停まる駅ならそこそこ都会だろうなんて、それはまったくの勘違いで、駅の周辺だけ無駄にがんばっちゃってる所ほど、ちょっとバスに乗って数分揺られたら山が見えてしまったりするのだ。まさにそんな郊外がオレの最寄駅であり、そこの寂れ具合の証明となる事柄が、白昼堂々起こった衝突事故と死体の持ち去りに、ただ一人の目撃者もいないこと。

 おかげさまで、今もオレはヒーローをしている。

「遅いなぁ…野島さん」

 夕方6時ともなれば早々に店じまいをする商店街の片隅、屋根にふざけたアンテナのついた「秘密研究所」のシャッターに背を預けて、オレは彼を待っていた。
 ヘラクレス野島なんて名前は、当然本名ではないのだろうが、オレは彼の下の名前を知らない。「野島さん」と呼べば、「何だ」と応じる、それでいいかと思えた。彼はパワフルライダー1号で、オレは2号。だから怪人が出れば先に出動するのは野島さんの方だった。オレが行くはめになるのは、彼の心が折れたときだけ。ちなみに、3回に1回はオレが出ている。割と頻繁にヘシ折れている。

(この間だって、そうだった)

 ピーコートのポケットを手で探る。ちょうど手のひらに馴染むサイズのグリップと、そこから伸びる金属。ドライバー。これでゴリゴリやったらオレの脛のカバーは両方外れたけれど、野島さんのは片足だけ残った中途半端な状態だ。それというのも、先日彼の部屋で外してあげようと試みたら、「音が怖い!感触が怖い!」と、そんなにかってくらいに怯えたので途中でやめるしかなかったのだ。

 オレがオレでなくなる気がする…!とまで言わせてしまったあの瞬間、ざわりときたものは、何だったろう?

 近くの小学校の方角から、下校をうながす鐘の音が聞こえる。まだ校内に残っている生徒は…。もうそんな時間か。ここに着いたとき、所長の山岸から「1号は2時間前に出動した」と聞いた。それならそろそろ戻ってくるだろうと待っていたのだが、そこから1時間待ったわけで、出動して3時間かかっていることになる。

 てこずっているのだろうか。
 蹴るなり突き飛ばすなりしてしまえば早いのにと、常々そう思っているのだが、彼らにとっての戦いとはそういうふうな攻撃ではないのだろう。心を攻撃するなんて回りくどいやり方で、今日も市民の平和は守られている。オレならば、もっと。

 もっと直接的に。

 ずいぶん待ったと自覚したら途端に焦れったい思いがして、手慰みにポケットの中のそれを弄んでいた。すぐにまた会うと思っていたから、もうずっとポケットに入れっぱなしだ。いまどき携帯も持っていない(ということを先日初めて知ったのだ)野島さんに会うには、ここへ来て待つしかないという可能性を、今このときまで気がつかなかった。それほどにあの人のことを、考えたりなどしなかったから。

(遅いな……)

 グリップの先から、くっと細くなる金属はひんやり冷たかった。指でたどっていけば、途中でまたマイナスの形に広がる。これを差し込んで内側から押してやったら、無理が祟ってやがて、乱暴にこじ開けることができるだろう。多少の悲鳴と泣き顔は承知のうえで、いずれは解放感がおとずれるのだ。自分がいっぺんに得たその宿命からの解放を、片足だけのお預けで耐えている彼なら、きっと尚更待ちわびているのではないか。ねぇ、野島さん、どんな顔をしてくれる?

(ああ、そうなんだ)

(オレはもう――)

「……佑川?」

 お前はこんなとこで何をしてるんだ、と長いダッフルコートのフードまできちんと被った彼に声をかけられた。強敵だったんですね、と質問に答えず返したら、受けたダメージがうずくのか肩を押さえて、「ああ」と言う。

「ヤツめ…オレの着信履歴に所長の名前しかないことを指摘してきやがった…。しかしオレは言ってやったのさ、『お前、赤外線使ったことないだろ!』…ってな。それでヤツの心はポッキリ折れたぜ」

「だから、かっこつけて言わないほうがいいですよ――って、え?野島さん携帯買ったんすか?」

 所長に言われて仕方なく買った、と言う。オレが不便だから買ってくださいと言ったときは「だって全然鳴らなかったら心が痛いだろ」なんて言って買う気を見せなかったくせに。しかもそうなると、最初に登録された連絡先は所長ということだ。あのやろう、今度会ったら頬をつねり上げるくらいじゃ済まさないぞ。

「…だ、だからだな、お前とも連絡取れるから、こんな所で待っていなくても…いくら改造されてたって寒いもんは寒いんだし……」
「あれ?野島さんを待ってたなんて言いましたっけ」
「うっ!違った…か」
「いーえ、違いません。1時間待ってました」
「それは…悪かった」

 だからあっためてくださいよ、野島さんちのコタツで。
 そう言ったら「いいぞ」と何も考えてない返答があって、彼にはきっと理由の分からない笑いがこみあげてしまう。「オレは、案外ムッツリだったんです」声が笑っている状態のままでそんな独り言、やっぱりあなたは頭の上に「?」を浮かべて。しょうがないな、オレはこれから、この間の続きをしたいと考えているのにね。

「それにしても、忘れてました。オレたちって一度死んで改造されてるんでしたね」
「そんな大事なことを忘れるな!普通の人間じゃ、とても怪人たちとはやりあえんだろうが」
「そうかなあ……」

 でも、確かに少しだけ普通じゃない。あの日から傷の治りが早くなった気がするし、夜も眠る気にならなければ何時間でも起きていられた。オレがそうなんだから、野島さんもそうなんだろう。

「じゃあ行きましょう、野島先輩」
「…!お、おう」

 たわむれにそう呼んでみたら、まんざらでもない表情で張り切って先導を務める。所長へ報告に来たんじゃないのかなあと思ったけれど、わざわざ教えたりなんてしなかった。早く再び、あの部屋へ行きたかった。手の中の金属はぬるく、グリップはわずかに汗で湿っていた。

「あーー、楽しみだなあ」
「別にオレの部屋には何もないぞ、知ってるだろ」
「や、いろいろ教えてほしいことがあって」

 教えて、野島さん。

 英雄がどれほど丈夫にできているのかを。

「そうか!任せておけ!」
「あっはは」

 もう、すっかり熱を持った

 この手のなかには、凶器がある。

 

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R18表現を含む内容のため18歳未満の方は閲覧しないでください。18歳以上ですか?(y/n)



2024年5月12日未分類

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